ひだまりBlog

GHのブログでなぜか特養を推す話。

訊かれもしないのに自分語り

私の福祉の出発点は特別養護老人ホームでした。当時は寮母、寮父と呼ばれたのですが、ケアワーカー職をしていました。福祉の世界に入ったきっかけは、突然の母の脳梗塞発症です。母はまだ55歳の若さで脳梗塞を発症して、救急病院→リハビリ病院へと入院しました。命をとりとめ厳しいリハビリを経て自立の道へと進んでいったのですが、救急病院から転院する際にケースワーカーと呼ばれる人を知り、医師とはまたジャンルが異なるが、その人のその後の人生に影響を与えるほどの重要な職種があることを知りました。当時のMSW(医療ソーシャルワーカー)は白衣を着ている人が多く「先生」と呼ばれていました。

ちょっとかっこいい気がしました。患者の家族である私は何も知りませんから、救急病院からリハビリ病院の選択の際も、ほぼワーカーのいうがままでした。どの病院を選ぶかで母のリハビリの質も変わってくることは今振り返ればわかります。非常に重要な局面なのですが、白衣を着たケースワーカーの「お母さんは右脳が梗塞になり、右脳は意欲を司る場所なのでそれほどリハビリによる向上は見込めない」という言葉に「そうなのか」と思うばかりでした。親戚に厚生省の役人がいたお陰でそのワーカーが勧めた施設よりハイレベルの病院に転院でき、母自身そこで意欲的に頑張ったので、かなりの回復を見せる結果となりました。

ケースワーカーの指示どおりに動いていたら、貧弱な病院でのうら寂しい環境を余儀なくされるところでした。

私は当時いた広告業界から医療ソーシャルワーカーに転身したいと思いました。ハンドルを握っている感がかっこいいと思ったからです。しかしなり方がよくわかりませんでした。社会福祉士という資格を取ればなれるのかと思ったのですが、この資格は業務独占の資格ではないし、ワーカーさんでこの資格を持っている人もそんなにいなくて、看護師などの資格と異なりわりとどうでもいい資格で、どちらかというとコネが大切なのだろうなという結論に達しました。私もまずは働かないと収入がありませんから、介護職でもいいのでとりあえず福祉の世界に入り、それから進路を考えようと思い特養に就職したのでした。

介護保険以前の介護業界はまだまだ閉鎖性が強く、中で何が行われているのか部外者にはよくわからない世界でした。振り返ると、出発点として社会福祉法人から福祉の世界に入るのは正解でした。介護の専門学校卒の若者が新卒で働く環境は、仕事への意欲や職業倫理観、ケース検討会、学会への参加等の勉学の意味でも、特養がよかったと思っています。福祉の仕事は、やはり福祉の世界で働くことの倫理観、「福祉の心」が大切なのです。2000年の介護保険制度施行後に民間企業の参入が相次ぎ、彼らは営利目的で行動しますから、結果として福祉サービスの品質が低下したように思います。(今、私が働くひだまりのいえも完全な民間企業ですが)

私にとっての介護業界は特養が出発で、それがよいならばなぜ特養に居続けなかったのか、それは続編で書くかもしれません。障害者福祉はほんの4年前から始めた仕事です。介護業界の人も障害福祉をヘルパー支援等で少々関わったりもしますが、部外者から眺めて、ケアマネの仲間と呟いていたのは「障害者への支援って、介護よりずっと難しいだろうな」ということです。

身体障害者ならそんなに難しくはないでしょう。知的障害者と精神障害者、特に私は精神科病院で働くPSWはとても難しいのではないか、ケースワークにあって最も難しいのは精神疾患の人への支援であろうと思っていました。それに比べりゃ高齢者のケースなんて重度の認知症だろうがそれほどパターンのないものです。職場近くの精神病院では年中、「看護師募集」の看板を出していて、精神科病棟で働いていたら数年で心が病んでしまうのかなと勝手な想像をしていました。そんなこともないですね。

ソーシャルワーカーになりたいと志してとりあえずケアマネになりケアマネジメントの基本を学んで、ややあって精神保健の世界にきましたが、入ってみての印象は「もっとも難しいと思っていた精神疾患のケースワークに携わる人がそれほどケースワークをご存知ではない」ということでした。初めは胸を借りるつもりでとても下手に各方面の人と接していたのですが、途中から「介護業界の人、例えばケアマネジャーの経験豊富な人のほうが、よくわかっているではないか」と思うようになりました。ケアマネジメントの考え方は、70年代にアメリカで、精神疾患の人向けに始まったものです。日本の介護保険制度はそこからパクっているのですが、精神疾患の人向けのケアマネジメントは日本では高齢者よりも遅れていたのです。

先に特養の話をしたように、日本では福祉専門学校を卒業した若者の多くが介護の現場に就職します。ここで経験を積んで、人によっては管理職になったり、株式会社の介護施設に転職していきます。特養には「福祉の心」たるベーシックな理念、経験値があり、新卒者は月給よりもまずはそこを学ぶために社会福祉法人へ行く人が多いようです。

今回のブログは特養アゲアゲの文章になってしまいました。特養の悪い面は次回にしますがよいことばかりではないですね。

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