コロナの変異株の感染が広がっています。各福祉施設で働く皆さんも戦々恐々とお察しいたします。先日、ひだまりのいえのご利用者さまにも濃厚接触者になった人が1名出ました。PCR検査の結果は陰性で事なきを得たのですが、それが色々とざわつくことがあり、グループホームの管理は難しいなと感じたことがありました。
◎話は飛んで、私が特養で介護職をしていた昔話をします。私の胸に発疹ができたことがありました。A子さんという重度の認知症の方に胸を掴まれてからこうなったようです。同僚は「疥癬かもしれないから皮膚科を受診したほうがいい」というのですが、看護科は入居者に疥癬の人がいると申し送りはしていません。なので大丈夫だろうと思い、放置していたら次第にカイカイは増していき、皮膚科に受診したら「疥癬だろう」と診断されました。医師は「施設で疥癬の患者は出ているか?」と尋ねて私はいませんと否定しました。が、私の身体は典型的な疥癬の状態になり疑う余地のないことになったのです。私は看護科の熟年看護師たちより疎まれました。感染防止のために常にグローブを着けるように指示されました。「荻野さんは、宿直の時に(利用者のための)一般浴槽に入るからそれで感染ったのよ」という看護師もおりました。とんだ厄介者になってしまったのです。私には疥癬のかゆみの辛さよりも感染者になり周囲に疎んじられることの辛さのほうがより辛いものでした。二次被害です。准看護師といえども看護学校で医学や看護学を勉強しているはずなのに、陰で「お風呂で疥癬に感染した」というまずありえない推測をして決めつけることが不愉快でした。疥癬は布団、衣類等もしくは皮膚と皮膚の接触で感染します。さらには私の耳に新たな情報が入りました。看護日誌には回診で「A子さんの疥癬の疑い」との所見があり記録されていたのです。(私が感染する少し前です)他にも数人の利用者に疑いがありました。看護師は介護職員にこの件を隠していたのです。私は腸の煮えくり返る思いでしたが、看護師は介護職よりヒエラルキーが高く、理不尽なことでも批判が許されないアパルトヘイトの世界が当時の特養では当たり前なので泣き寝入りするだけでした。
この出来事を振り返り思うのは、情報を正しく公開することと科学的根拠に基づいて対策することの必要性です。
看護師たる者が「入浴で疥癬に感染する」と誤った理解をして感染経路に蓋をして自分たちの責任については考えない無責任を私は許しません。しかしながら一方で、人間は根拠のない気分に左右されがちな生き物で、それを全否定するのもどうだろうかと哲学的な気持ちで考えることもあります。
今年1月にひだまりのいえでもコロナ陽性者が発生しました。大事に至らず収束してホッとしましたが、非常時には人間は変なモードになってしまうものです。ある世話人さんが先程まで感染者のいたリビングでせっせとアルコールスプレーを空間に振りまいていました。「空間除菌」をしているつもりなのでしょう。噴霧されたアルコールはゆっくりと床に落ちるだけでなんの意味もありません。私は「意味ないよ。」と説明したのですが、彼女は寂しそうな笑顔で黙っていました。傷ついていましたね。私も言おうか言うまいか迷った末に話したのです。でも科学的根拠のないことは認めてはいけないと思うのです。これを野放しにすると職員はあらぬ方向に向かいデマをも信じかねなくなります。クレベリンの札を胸からぶら下げかねない、人間の心はもろいものなのです。
話はようやくコロナの感染対策へと冒頭に戻りました。管理者は気をつけないと職員は根拠のない呪術的な対策をしかねません。私はそれが嫌なのです。人は非常時には変なスイッチが入り妙なことをしがちです。私はそれを注意しつづけるでしょう。「入浴で疥癬に感染した」という非科学的な判定をされたことがトラウマになっているのでしょうな。
※職員の皆さんにはこの本を一読することをお薦めします。(この本がすべてとはいいませんが)
この記事へのコメントはありません。