ひだまりBlog

「元気で。とりあえず元気で。みんな元気で。」

そもそもなぜあなたは福祉の仕事をしているのかと考えたことはありますか。

皆さんは福祉・介護業界は大学生が就職したくない業界の第一位だとご存知ですか。ネットニュースでこのアンケート結果を目にして「そりゃそうだ。」と思ったのですが、私は福祉業界にいます。福祉業界が大学生にとっての人気業種になる世界というのもいびつな気がするのでこれでよいのですが、我々はこの仕事に身を投じています。

今、ユニクロのバイトの時給を調べてみたら1400円でした。これが安いのか高いのかよくわかりませんが、2002年では時給900円だったことを記憶しています。2002年当時、デイサービスのパート時給とユニクロの時給は同じ900円でした。私はパートさんにこう言ったものです。「我々の時給はユニクロと同じである。皆さんがユニクロでなく介護の仕事を選んだのにはそれなりに理由があるのでしょう?私は、皆さんがこっちを選んでおいてよかったと思えるようにしたいと思うし、皆さんも時々、どうして介護の仕事を選んだのかを考えてみませんか。」当時の私は30代で、40代のパートの奥さん相手にずいぶんと偉そうなことを言っていました。パートさん達はポカンとした顔で「突然、この人何を言っているの?」という反応でした。

2022年において福祉業界はユニクロにずいぶん水を開けられました。それでも福祉業界で働く人はいるわけですが「俺はなぜこの仕事をしているのだろうか」とそもそも論を考えることがあります。

会社の入社面接において志望動機は大切です。私は20代前半の頃、R社という人材コンサルティング複合企業にいました。求人情報誌の広告ページの制作部にいたのですが、二次試験で作文があり、お題が「広告を志望する理由」だったと記憶しています。その時に私はトリスウィスキーのテレビCM「雨と犬」というタイトル名らしいのですが、そのCMについて書きました。私が高校生の頃、放映されていて心が揺さぶられるコマーシャルだったのです。

内容は、夕暮れ時におそらく野良の犬がお寺の石段を駆け下りていったり、雨宿りをしたり、商店街をトボトボと歩いている。買い物をする主婦の足元をすり抜けていく犬は足元がややおぼつかなく、情けない見た目の犬でした。「いろんな命が生きているんだな。元気で。とりあえず元気で。みんな元気で。」とナレーションが入ります。

このCMを作ったのは仲畑貴志さんというコピーライターで、仲畑さんは広告の名作をいくつも作っています。

私は作文でこのCMが好きだと書いて、その会社に入社しました。1本の広告が当時の人生の進路を決めたといってよいのですが、なぜそんなにあの広告が好きだったのか、自分でもよくわかりませんでした。あれから30年以上の時が経ち、私はいくつかの仕事をしてうまくいかなかったり、適応したりという人生を歩んできました。そして最近、気づいたのです。あの情けないかんじの犬は自分自身の投影だったのだと。30年以上、私には基本的に変化はなく、トボトボとややおぼつかない足取りで路地裏を歩いているような生活をしています。業界は広告業界から福祉業界へと大きく変わったのですが、私の生きる姿勢というか仕事への態度というか、人々への目線は「とりあえず元気で。みんな元気で。」というもので変わりはないのです。私の弱者へ目をやる態度は私自身が弱者であるにほかなりません。「才能とは、できないことがたくさんあることをいう。」とある小説家が述べていて、できないことがたくさんある私は(我が意を得たり!)と思いました。

サントリーCM「雨と犬」

※余談ですがこのCMはカンヌ映画祭のテレビCM部門でグランプリを獲りました。

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コメント

    • 皆川
    • 2022年 12月 17日

    このCM覚えてます笑 私は何故か心がキュっとなったのを覚えてます。今見ても同じでした。
    そして、何故私は福祉の仕事についたのか‥そして続けているのか‥
    いつか、サントリーを手に萩野さんと語り合いたいものです。

      • 荻野吉重
      • 2022年 12月 21日

      このCMを知っている方は50代以上ですね。皆川さんはベテランの方かとお見受けしました。

    • 皆川
    • 2022年 12月 17日

    すみません。『荻野さん』でした。

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