ひだまりBlog

(GHは)難しい仕事なのにほとんど素人が始めちゃう件について

精神保健業界の皆さんこんにちは。お元気ですか。日常の業務において大きなストレスを感じてはいらっしゃいませんか?ひだまりのいえのHPをご覧になった遠くの市町村の支援者さんから問い合わせがあり、見学がてらにお話をすることがあります。まったくの初対面で社会資源としてこれまで重なることのない方とのお話はしがらみが発生しないので、逆にホンネの話ができることもあります。

そこで運営に問題のあるグループホームの話題をときどき耳にします。グループホーム(介護保険のでなくて)ってわりと誰でも参入しやすい事業なので思いつきで始められるのですね。それでよいのですが、運営のノウハウ、理念、スタッフの練度に欠けるためにあらぬ方向に進んでしまい、よいスタッフと本来いるべき利用者がいなくなって(いてはいけない利用者がいる)、吹き溜まりのような施設になってしまうこともあります。運営に問題のある施設がどこに問題があるのか、自戒を込めて思いついた点を何点か述べてみようかと思います。

お客様商売をしている

介護保険制度が始まった2000年頃、介護業界には株式会社が新たにたくさん参入してきました。私の考えでは介護業には株式会社という法人格はなじみません。彼らはご利用者さまを「お客様」と呼んでいます。精神、知的障がいの世界において「お客様」は合いません。

精神保健の話をするのに介護保険制度の話を例えにするのですが、あちらが10年先を行っていたのでまあ聞いてください。「お客様」ではダメな理由を。

ケアマネジメントって中立性・公平性が大切なのですが、利用者を「お客様」とするとここですでに破綻します。「お客様のご要望を叶えましょう。」これではダメです。福祉の仕事は利用者の要望を叶えることではないからです。

ケアマネジャーがケアプランを作成していて、ご利用者さま(高齢の本人やその家族)が最後までケアマネのプランに納得せず、もしくは反対し、不満を持ち続け、ケースが終了する、要するにご本人がお亡くなりになるということが時々あります。ケアマネジャーが作る原案は、その中身が、本人にとって都合の悪いことだったりその必要にまったく気づいていなかったりすることはよくあります。例えば「リハビリテーションの必要性」が優先順位の高い生活におけるニーズであることは多いのですが、本人は「楽をしたい」「ヘルパーを呼びつけてなんでもやって欲しい」のが要望であることは時々ありましょう。「もう85歳だから好きにさせてくれ」と本人が訴えても、脳梗塞の後遺症、例えば左半身麻痺の身体でどのように自立していくかを考えた場合に、週1日、通所リハビリに通い理学療法の訓練を受けたり、通所リハで入浴、食事、他の利用者との交流をする、といったケアプランを利用者は行わなくてはなりません。「すべきとはなんだ!」と立腹される方もいましょうが自立支援とは時にはとても厳しいものです。

私の母は脳梗塞になり片麻痺となりリハビリ病院に入院したことがあります。理学療法室では、母のすぐとなりで脳性麻痺の頭にヘッドギアを付けた小さい子供がギャン泣きしながらも歩行訓練している場面に出くわしました。子供はスパルタな指導をされていたのですが、母は小さな子供でも厳しい訓練をしているのだから自分もちゃんとやらなければならないと覚悟を決めたのでした。

母はリハビリ訓練を頑張ったせいか当初の予想よりもADL(日常動作能力)は回復しました。患者をお客様扱いしていては到達することのないことでしょう。

ケアプランというものは建前としては支援者が原案を出してそれを利用者が署名して同意するしくみになっています。ですがプロの作る計画書にはおとなしく同意するのが得策です。もちろん「プロが作る」ことが前提ですが。

介護保険の仕組みにおいては(ケアプランに対しての利用者の満足度)という概念が途中から加わったために改悪となりました。「顧客満足度」というお客様商売のものさしをなぜ入れたのでしょうか。これはニーズでなくデマンドを優先させるプランが作られやすくなる原因になってしまいます。

公私の区別がつかなくなっている

これは本当に気をつけなければならない事項です。私が風の便りで伝え聞くよくない運営者は自宅とグループホームを兼用していることがありました。少ないスタッフで回し、経営者が管理者、サビ管、世話人すべてを兼任しているような組織。夕食の食材も経営者が自らスーパーで買ってきて世話人がその食材でメニューを考えるとか。勤務中とオフの時間の区別がつかなくなり、それをよい行為、よい運営であると思うようです。私は自分の経験上、このような運営では虐待が起こりやすいと考えています。仕事のストレスを吐き出す場所もないのです。自宅とホームは分けるのが懸命だと思います。

私は世話人と利用者との多重関係の構築の有無を厳しくチェックします。熱心に仕事をするわかっていない人は、利用者に施しをすることでよい仕事をしたと勘違いしてしまうことがあるのです。

どんなケースでも受け入れてしまう

これも熱心な素人が陥りやすいダメな行為です。とてもやっかいなケースが舞い込んでくることは時々あります。他の施設がギブアップした。また利用者自身が「とてもひどい目に遭った」と先の施設での被害を切々と訴えてくることもありましょう。それを真に受けて「かわいそうな彼を救ってあげなければいけない。福祉の心とはこういう人を受け入れることである。」と素人らしい崇高な理念で危険なカードを嬉々として引いてしまうことはよくあります。きちんとアセスメントしてその人がグループホームでの生活が適当であるか判断する確かな目が必要です。間違った受け入れは、利用者と支援者の双方にとって不利益になります。例えば強度行動障害の方をひだまりのいえでは受け入れていません。詳細は省きますが、私は一般のグループホームに強度行動障害の人が入所することは間違っていると考えています。行政は運営の実際をよくわかっていませんから重度障害者のグループホームへの受け入れ推進に一生懸命です。排泄介助や食事介助、入浴介助が必要な人のためのグループホームももちろんあるし、あってよいのですが、精神科病棟からやってくる人と重度障害者を一緒にした運営は、軽度の障害者にかなりのストレスを与えることでしょう。歯科と口腔外科は異なることは皆さんも理解できると思います。

問題のあるグループホーム運営を3点述べてみましたが、ひだまりのいえも他の事業者さんに上から目線で語れるほど立派な運営ができているとは思っていません。失敗しながら学習してここまでどうにか漕ぎつけたかんじです。世話人の仕事に就こうかと思っている人が求人サイトを閲覧した際に、そのグループホームの運営の実際まではなかなかわからないことでありましょう。ある種の『運』によりその事業所に勤めることになると思うのですが、よい環境で働きたいと願う求職者が運任せで職場選びをしている現状はよろしくないなと感じます。

グループホーム入所を希望されるご利用者さまにも同様で、その方に合うホームに入所して欲しいと願います。いずれにしても施設のホームページは情報収集には大事な要素です。

私はコツコツブログを更新してミスマッチのない入所に努めます。

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コメント

    • 皆川
    • 2022年 12月 28日

    感無量。
    荻野さんの元で修行したいものです。

      • 荻野吉重
      • 2022年 12月 31日

      さては、本来いるべきではない利用者が入所しているのですね。お察しいたします。この仕事は管理者とサビ管の判断が大切です。経営陣が誤った舵取りをすると現場のスタッフはしなくてよい苦労をされられます。

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