ひだまりBlog

サービス優先ではいけません/親御さんが決定権を持ちがちな知的障がいの世界

外部の相談員さんといろいろと情報交換をしていて「それっておかしいよね」と双方で思うことがあります。私はこの業界には浅い人間ですが、長い人間がふつうだと思っていることに疑問を抱くのでしょうか。「○○さんのケースでグループホーム見学をしたのですが、『うちのB型就労支援事業所に通っていただきます』と言われました。○○さんはその仕事に興味はないし…」

グループホームというサービスは日中活動とセットになっているのが基本です。職員の配置は夕方から翌朝になり、日中は誰もいません。安全面からみても、日中は外へ、それも同じ会社で運営している作業所へ行ってほしい。「私達はトータルでケアをしているのです」みたいな。そんな事業所は多いです。

精神保健ジャンルにおける福祉は主に知的障害者、それもカナー症候群の自閉症、ダウン症といった決して軽くはない障害を持つ人向けに始まりました。障害者総合支援法施行以前はご両親が作業所を探して日中は作業をさせて、できれば作業所が運営するグループホームで寝泊まりする。週末に外泊して家族と団らんする、こんなスタイルが通常であり、このようなサービスが利用できるだけでも親は十分に満足されていたのではないしょうか。

新規参入の私からみるとそんな知的障害ワールドには、大きな、そして一番大切な視点が欠けています。「本人の意思、自己決定権」です。

ケアマネジメントの視点でいうと、相談支援専門員がケアプランを立てていく結果としてグループホームだったり、作業所だったりとサービスが導き出されて、その人に合った事業所も選択されていくのです。ニーズ優先が必須であり、先にサービス側が決まっていたのでは利用者本位とは言えません。

「そんな綺麗事をいうな」という声もありましょうが、私は20年前からこのような原則、標準を守ってプランを立ててきました。何人たりとも私のケアプランに立ち入ることはできませんでしたし、転職して、そのへんがおかしなところはすぐに辞めた経験もあります。介護保険制度におけるケアマネジャーの話ですが、ケアマネの仕事はそのくらいに公平性、中立性が大切な仕事でした。

(ある利用者さんがやってきたとしよう、その人のケアプランを立てて、サービスがすべて外部ばかりでは、こちらに収益がぜんぜん上がらない。そんなことをしていては会社が潰れてしまう。うちは慈善事業ではないのだ)と多くの障害者福祉の経営者は思うでしょう。経営者とは長く運営する老舗の社会福祉法人も含めてです。お気持ちは理解できます。

私がかつて働いていた法人は、地域包括支援センター、ケアプラン、訪問介護、デイサービス、訪問入浴、福祉用具レンタルと在宅サービスを広くやっていました。主に訪問介護で利益を上げていました。介護報酬上そうなるしくみだったので。デイサービスで利益を上げるのは大変です。

それはともかく、試しに売り上げの内部、外部を分けてみたことがあります。自前のケアマネジャーが立てたケアプランからのサービスと、外部のケアマネジャーがプランを立ててそれがウチにやってきたサービスの内訳です。内部(55%)外部(45%)でした。商売根性丸出しで利用者を囲い込まずとも外から仕事はやってきました。

私はデイサービスの若い生活相談員にこう言ったものです。「外部のケアマネから来るケースを大事にしよう。数字は少なくともその1ケースがうまくいったらさらに利用者が増えたり、他のケアマネにも評判は広まる。ケースは外部からやってくる。そうしたらどうなるか。君は生活相談員として独立した意見を言いやすくなる。内部のオバちゃんケアマネが無理難題をふっかけてきても断ることができるようになる。その意味でも通所介護計画書は大切。大いに外部のケアマネをうちに招いてカンファレンスに参加してもらおう。」

この事業所はこの通りになっているみたいです。

仕事は外に投げるとうちにも戻ってくる。キャッチボールみたいなもの。

介護業界にいた時に私が「嫌だな」と感じたのは、ケアマネジャーが家族の目ばかりに向いていて利用者本人をないがしろにしているのをみたときです。営利目的である株式会社の事業所は大手でもそんな感じの人が多かったです。

「利用者本位っていうても、うちのお婆ちゃん、重度の認知症で本人の気持ちもなにもありませんがな。」「ダウン症のうちの子の気持ちは母である私が一番よく知っています。」このような利用者の家族にケアマネジメントとは、と話すことは難しいことです。ですが福祉従事者が理解していないのはよくありません。

(外部の相談員と話をしておかしいと思った)そもそもの話に話を戻します。本人不在の考えでことを進めてしまうのはケアマネジメントの概念に欠けることと、それでは経営できないだろうという経営者の不安から来るのだと思います。まあ、塩梅を考えてうまくやれば、計画を立てる人とサービスを提供する人がバラバラでも、異なる会社に所属していても問題はありません。むしろ双方でリスクを分散させているのです。私は一つのケースが舞い込んできたらそれに丁寧に取り組むことで、次の新たなケースの依頼に繋がっていけばよいと考えています。「小さなことからコツコツと。」©西川きよし。

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