ひだまりBlog

ひだまりのいえは新型コロナウィルスとどう向き合ってきたか

2021年2月、利用者1名が発熱したことで発覚したコロナ感染。高齢者施設や福祉施設ではコロナ陽性者が出た際の対応の実際について語る施設はあまりないようですが、私達はこの経験を他の福祉施設へも共有したい気持ちより経過をここに述べてみることにしました。

感染した利用者は40代で日頃コロナを怖がっている人でした。手洗いやマスクなど一般的な予防策は行っていました。1月下旬2泊3日の外泊で、いつものグループホームでのタイムテーブルとは異なる行動をとることになりました。ちょっと羽根を伸ばした気分で、津田沼に買い物へ行ったそうです。大型小売量販店で買い物をしました。振り返ればここでウィルスをもらってきた可能性が高いです。私はかねがね、グループホーム利用者の毎日の行動は決まっており、日中活動の場所も決まっているので、一般の人よりも感染する可能性は低いだろうと思っていました。外泊は注意しないといけない要因です。

初めは朝の検温で37.2度くらいの微熱がありそのままB型作業所へ出勤しました。翌日の晩に38度の発熱となりました。

翌日、船橋市保健所へ施設で発熱した利用者がいる旨を報告しPCR検査について尋ねました。保健所からは検査は各自で行ってほしいとのことでした。千葉徳洲会病院が抗原検査をしていることがわかり利用者を同伴して受診に行きました。ここで利用者を小さな車に同乗させました。検査はドライブスルー方式でしたが、我々は車内で結果が待つように指示をされて小一時間、車内で待ちました。結果、陽性であることがわかり、その後のホテル療養のためのホテルへの送迎も車を使いましたが、職員が1名、送迎のために患者と濃厚接触することを強いられます。これは仕方のないことでした。

抗原検査で陽性だったことを保健所へ報告しました。このときの保健所は私には「塩対応」でした。軽症者については自宅療養への誘導がなされました。穿った見方をすれば精神障害者ということで病院へもホテルへも調整したくなかったのだろうと察しました。家庭に課題を抱えるケースだったので私はホテル療養にできないかを強く訴えました。なんとかホテルに入ることができました。しばらくしてひだまりのいえの利用者ということで係が福祉施設担当に変わってから保健所の対応は一変します。感染症班からひっきりなしに電話がやってくるようになりました。彼らは過去2週間の日報の提出を求め、各利用者の体温のチェックや、食事時のテーブルに着席する位置など、電話とメールで細かい状況をヒアリングしてくれました。そこでの担当者の予想では「6名全員が感染していそうだ。」とのことでした。

感染症班の人は利用者が食事をどのようなスタイルで行っているかを詳しくヒアリングしました。隣席との距離は何センチか?と細かい聞き取りです。家庭用のリビングテーブルの距離では隣人ととても近いこと、一斉に集まって摂っていることのリスクも指摘されました。

そしてホームの他の利用者と職員のPCR検査へと対応は移ります。鼻咽頭による採取か、もしくは唾液による検査か、利用者と職員のどちらを先にするかなど、打ち合わせは細部に渡りました。感染症班は各利用者の基本情報も入手しているので「Aさんに鼻咽頭の検査は大丈夫だろうか?」と私に尋ね、当初、鼻咽頭の予定だった検査は唾液に変更されました。唾液は痛みや怖さはありませんが、試験管に採取する過程は利用者には難しいこともあり、前日の晩に、利用者全員でリハーサルをしました。当日は一回で無事に終了しました。感染は一刻を争うので検査失敗はさらなる感染者増加の懸念があり、感染班はまさに時間との戦いで、よりベターな方策を決めていました。

結果は利用者2名と職員1名の感染が判明しました。

世話人さんに陽性者が出てしまったことを私は残念に思います。精神的にショックでしょうし、ダブルワークをされている人だったのでもう一つの職場にも迷惑をかけてしまいました。3名と最初の1名で4名の感染者がわかったのですが、幸いなことにPCRでわかった3名の症状はとても軽いものでした。

さて、感染者の隔離をどうすべきかがテーマになりました。精神障がい者の入院を快く応じる病院もホテルもないのはわかっています。そこでまだ稼働していないひだまりのいえの空きのグループホームへ利用者を移動させることにしました。利用者の性質を考慮した結果、陰性者を別ホームへ移動させました。(陰性でも濃厚接触者には変わりはありません)また陽性者のいるホームは閉鎖をして、シフトもバラし入室する職員は私だけにしました。感染班とのやり取りの末決めたことです。私達は保健所の指導を遵守しました。彼らは人間の命、健康を最優先に考えています。そこで世話人の入室を禁止して2週間の間、食事作りも含めて利用者だけで頑張るようにしていただきました。保健所の皆さんは毎日、21時を過ぎても丁寧に指導をしてくれました。的確な指示とともに精神面でも支えてくれました。

自粛期間が終わってから市役所とトラブルが起こりました。指導監査課から「なぜ、世話人がシフトに入らないのだ」と指導が入ったのです。彼らは人間の命よりもマニュアルの遵守が大切なのでしょうか。そもそも保健所の感染班との話し合いで決めたことだし、感染班には指導監査課から応援に来ている人もいて私達との窓口になっていました。不思議です。 つい愚痴りたくもなります。グループホーム内の感染で、私は皮膚感覚で市中にはウィルスが蔓延していることを実感しました。誰がなってもまったくおかしくないのです。コロナは私達のメンタルや行動に大きな影響を与えます。職員は当然、とてもナーバスになりますしある意味、人間性のリトマス試験紙の要素があります新型コロナには。ご利用者さまも非常時の強いストレスに晒されましたが、特記すべきこととして「あの人がコロナを持ち込んだ」と批難した人はいなかったのです。皆さん、その人の病状を慮っていました。この仕事をしてきてよかったと少し気持ちが和みました。

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