今日のブログは安倍元首相を暗殺した山上容疑者のパーソナリティーから仕事について考えてみようかと思います。
山上容疑者の生活歴については報道により皆さんよくご存知なので説明は省きます。先日のNHKスペシャルにおいて彼の叔父は、「2015年の兄が自殺をしたことをきっかけに(性格が)変わった。」と証言しています。その後の山上容疑者は定職に就くことなくバイトを転々としていました。
2年前に勤めていた会社では彼はフォークリフトを使った運搬業務をしていました。
フォークリフトはパレットと呼ばれる荷物を載せる台の隙間にフォークを差し込んでそれを持ち上げてA からBへと移動させる車両系機械です。安全で効率よく作業するための手順は工場内で定められていたようです。通常は先輩から作業手順を教わってそのとおりに行うものです。ですが、山上容疑者は構内でのマニュアルどおりでなく自分で考えたやり方で行っていて、それによりトラブルも発生しました。
(※東洋経済オンラインより引用)
>2020年、山上容疑者の採用面接を行った担当者は「毛並みが違う」と感じたという。
「フォークリフトの運転手は体育会系が多い。その点、彼の立ち居振る舞いはホワイトカラーそのものでした。能力も高かった。フォークリフト操縦は衝突や破損の事故が頻繁に起きるのですが、彼については事故報告が1件もなかった。オフィス内で働く幹部たちの印象も非常によかった」(社長)
そんな山上容疑者が悪態をついたのが、オフィスの外で働くブルーカラーの人々だった。
「彼は自分なりの知識や理論に基づいて仕事を完璧にこなそうとするタイプ。だからなのか、ブルーカラーの運転手や工場作業員に『手順が違う』と意見されると、『おまえに言われたくないわ』と反発する。口論が起きるときは、いつもこのパターンでした。進学校を出ている彼の中には『自分はこんなところで働く人間ではない』といういら立ちが強くあったのでは」(同)
(※引用おわり)
山上容疑者は彼のツイッターでの文章などより頭のいい人であることが伺いしれます。頭脳明晰で奈良県の進学校を卒業した彼は、母親の献金問題がなければ一流大学へ進学して立派な社会人になっていたのではないかと推察する人も多いです。
工場作業員に手順の違いを指摘されて「おまえに言われたくないわ」と言い返す彼にはある種の選民意識があったのかもしれません。「本当なら俺の人生はこんなはずじゃなかった」と思いたくなる気持ちは私にもわかります。また、思春期以降に精神疾患に罹り、社会からドロップアウトすることを余儀なくされた人にも多いのではないでしょうか。
実際、山上容疑者の仕事ぶりは優秀でした。事故報告が一件もなかったのです。彼の考えた手順は数学に例えると、シンプルな公式を用いた美しい解への手順だったのでしょう。ただ、それを行うにはそれなりの理解、省略、機転が求められ、一般的には工場構内のマニュアルのほうが誰にでも理解しやすく、とっつきやすい方法だったのかもしれません。
本当に頭の賢い人はすべてをわかっていながら工場作業員の手順どおりに行い、人間関係での軋轢が生じることを避けることでしょう。相手に譲る気持ちの小ささに、彼の生育歴の特殊さを感じます。
また、この手の話は、工場系だけでなく福祉系・介護系でもあるのではないでしょうか。
私の福祉業界への始まりは特別養護老人ホームの介護職でした。母親が脳梗塞で要介護者になったことがきっかけで、ホワイトカラーな職場から転職したのです。
当時は介護保険制度もない時代でした。入職して半年か1年ほど経った頃か、私も利用者を数名担当することになり、アセスメント表を埋めていく作業もするようになりました。
休憩時間に職員でお茶を飲みながらご利用者さまについて語り合っていました。ある人の夜の行動について、私が「アレって、夜間せん妄ですよね」というと主任格の職員が苦々しい顔をして私をみつめました。その主任は夜間せん妄の意味がわからなかったのです。彼は「(わかったふうに)決めつけるな」みたいなことを言った記憶があります。今振り返ってもその利用者の行動はせん妄によるものでした。5年も働きながら知識を知らないほうが恥ずかしいと私は考えるのですが、この私の思考はちょっと山上です。
当然というべきか、閉鎖性の強い特養の現場において私は嫌われました。
黙ってりゃいいのについ口にしてしまうのですね。ADHDぽさが伺えます。
介護の世界でも専門卒と大卒という2系統の学歴のせめぎ合いがあります。大卒から介護職に就く者はたいていボンクラなので専門卒の人も安心しているフシがありますが、私も山上と同様にイレギュラーにその業界にやってきたタイプであり、この手の人はドメスティックな人たちにはめちゃ嫌われるものなのです。あの頃はいらぬストレスが溜まりました。
山上容疑者がフォークリフトのバイト職に甘んじるというのは確かに不幸なことであり、それなりの役職に就くことができれば発揮される能力はまったく違ったものになっていたと思います。
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