昔話から始めますよ今回も。印象に残っている世話人さんでこんな人がいました。その人はとてもがさつな性格の人だったのですが、ボロボロの彼のリュックはいつもチャックが半分空いていてその中にトイレットペーパーがワンロール入っているのがみえたことがあったのです。(ホームの備品であるトイペを持って帰るのか!)ギョッとしますよ、心の準備がないと。この方は夕食の食材をも中途半端にリュックに入れてしまうことがあり、それを発見したASD(自閉症スペクトラム症)のご利用者さまからチクリの電話が私に入るわけです。彼はその世話人さんの一挙手一投足が気になってしまい落ち着かないのです。その気持ちわかります。そして、どうしてそんなことをするのかまったくわからないのです。本人を問い詰めたこともありましたが一貫して無言でした。
他の事業者のグループホームの噂話で、ホームの備品や食材、調味料とかを持ち帰る人がいるという話は聞いたことがありました。この業界、凄い人がいるものだなと感じました。
別件。年配のエネルギッシュな世話人さんがいらして、彼女はホームの異変にとてもよく気がつく人でした。「調味料の減りがとても早い」「お米の減りが早い」「◯◯さんはトイレを汚す」といった彼女発信の風説がチャットツールや伝聞で私の耳にまで入ってきます。異変に気づく世話人さんをA子さんとしましょう。彼女は利用者をもしっかりと手綱を引いて、ある意味コントロールし、さらには情報提供者として利用者を取り込みもしていました。「なんだか、世話人のBさんが調味料を持って帰っているみたいだよ。大きなトートバッグを携えてやってくるんだよ彼女は。」とホームのぬし的なご利用者から伝聞が入ります。この状況を世話人C子さんに尋ねると、Bさんが調味料を持って帰っているのはどうも間違いないらしい。
世話人の間において、商売道具である調味料をパクるとは許されないことです。横領ですよ。異変に気づくA子さんはいつの間にか私の知らぬLINEグループを作成して(世話人リーダーをうまく説得して、備品等のやりとり専用のLINEグループを1本作らせたのです、世話人用に)そこでホーム内でしばしば巻き起こる魑魅魍魎を発信しつづけました。調味料の瓶にはナンバーリングさせたり、開封日をラベルにマジックで記したりと、日に日にマネジメントがとてもマイクロになっていきます。彼女はスパイラルノートで備品一覧表を作り、1本使うごとに残数を書き残すというチェックを世話人に強いるようになりました。物品を管理すること、すなわちそのホーム全体を管理する、支配的になっていきます。A子さんの周辺にいる人はいつの間にか自分がA子さんに悪く思われないかと気にするようになっていったことでしょう。
それにしても、利用者の大事な行政書類が紛失した「もしやオレがなくしたのかな」なんてドキドキしていたら、A子さんの勤務日に出てきたこともありました、その利用者さんがポストで見つけたというのですが、彼は短期記憶に障害があるのです。
私は「疑惑の銃弾」の故三浦和義氏を思い出しました。彼は少年時代に、放火を発見して消防署から表彰されたこともあるのですが、のちに彼自身による放火であることがわかったのでした。
そして先程の(調味料をトートバッグに入れて持ち帰っているのではないかと疑われたBさん)に私はある会議の場所でズバリ尋ねました。醤油や味醂を持って帰っていないかと。
Bさんは「なんでそんなことする必要があるの?(やっていません)」たしかにわざわざ数百円のために重い荷物を持って電車に乗らないよな。Bさんは鳩が豆鉄砲を食らったような表情でぽかんとしていました。
みなさんは「ガス燈」という古い洋画をご存知でしょうか。イングリッド・バーグマン主演の心理サスペンス映画です。この映画の脚本の肝は、バーグマンが夫の操作により「私って精神がおかしくなっているのかしら。きっとそうだわ。いやそうじゃない。」と混乱に陥れる話なのです。バーグマンの大事なブローチがなくなったり、手紙がなくなったり。リビングの灯り(映画の中のロンドンではガス燈を使っていました)が小さくなったり大きくなったり。
物がなくなるってけっこう恐い出来事でしてね。その手の事件は常に夫と婦人であるバーグマンの二者間の状況において起こるのです。バーグマンは精神がおかしくなりそうなほどに混乱し情緒が乱れますが、なんのことはない、夫の自作自演なのですよ、紛失の原因は。
いや、なんのことはないなんて軽く考えてはいけません。紛失の原因、窃盗の犯人であるとほのめかされた人はたまったものではない。話はこのブログの二段落目に戻ります。ホームの調味料や利用者の大切な行政文書が紛失したのは(発見したのは、もしくはそうではないかとほのめかされたのは)決まって年配のエネルギッシュな世話人さんのシフトの人でした。この方の勤務日には事件が巻き起こるのでした。真相は闇の中です。私は裏をとらずに語っているし、映画における観客の視点で状況をみられる人はいませんから、どうにもならないのです。最後に私の心に残ったことを申し上げるとエネルギッシュな世話人さんは退職されたのですが、彼女のスパイラルノートの備品一覧表も彼女とともに書庫からなくなりました。彼女にとっては、ホームを制するための大事な小道具だったはずですが。
わかりすぎます。いますよねー。世話人の支援も必要なのか。。。頭が痛い話しです。