他のグループホームで世話人として働く方と話をする機会がありました。その人はその事業所を辞めたいともらしていてその理由を聞いてみたのです。
ご利用者に強度行動障害の人が入所しているとのこと。しばしばパニックになり暴れてしまうのだそうです。20代の青年で力も強いのでしょう。接遇にあたる世話人も大変ですが同じホームで暮らす他の利用者も大変だなと思いました。大声を張り上げたり自傷や他害行為をする人がグループホームにいるわけなのです。障害支援区分では最大の区分6だと思われます。ひだまりのいえには入所できない方ですね。青年がそのホームに住んでいるのは経営者がご家族と懇意にされているからとのことで職員たちは青年にはとても気を使っているとのことでした。
NPO法人に多い印象があるのですが、運営者の福祉への熱い思いが掻き立てられて「思い」が運営の源泉になっている事業所はよくあるものです。そのグループホームにおいてはおそらく運営者は「彼のために頑張ろう。彼のような人はウチで受けるべきなのだ。ご利用者さまに寄り添おう。」などと世話人さんへ話している気がします。当の利用者はたびたび興奮して暴れまわり、しかも『自分は庇護を受けた存在で追い出されることはない』と鼻をくくっているのです。次第に世話人は精神的に参っていきます。「この人はグループホームにいるべきではない」という気持ちを抱きますが「福祉はこのような人も受け入れるべきである。彼は他に行く場所がないのだ」とも考えたりして悩み、消耗します。自責の念すら抱き退職される世話人さんもいるのではないでしょうか。
グループホームの経営はなかなかに難しいものです。一人の利用者の減少が売上に大きく響きます。とある精神障害者専門の税理士事務所のホームページを読むとこんなことが書いてありました。「区分4から6の方を入居させましょう。重度の方をグループホームに入所させることは売上の点だけでなく、これは福祉の本懐でもあるのです。私達は皆さんを倒産させません!」気持ちはわかりますが、恐ろしいコメントです。この事務所にコンサルを任せたら長期的には崩壊するではないかと私は思います。社会資源をセグメントで分けて考える視点がないのですね。区分4と出るのにはそれなりにワケがあります。軽度ではありません。そして精神障害者施設への入所は区分4以上です(50歳以上は区分3以上)職員の配置基準や環境の基準がグループホームより手厚い施設にはそうしなければならぬ理由があります。素人が容易に参入できるグループホームで施設と同様な基準で利用者を受け入れていたら大変なことになりますが、そのへんをわかっているのだろうかと思うのです。
経営者や管理者が忘れがちな視点として「ご利用者さまには退勤や申し送りはない」ということがあります。
強度行動障害の利用者への接遇のコツを掴んでいる職員はいるかもしれません。
ですが同じ屋根の下で生活する他のご利用者さまは仕事でそこにいるわけではないし逃げる場所もないのです。声の小さい人、気持ちのおとなしい人が割りを食う世界はいけないことだと強く思うのです。障害福祉事業に携わる者の心構えとして、私はこの業界において異色なのでしょうか。
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