ひだまりBlog

ふたつの福祉

ひだまりのいえの提供するサービスには障害者グループホームと自立援助ホームがありますが、似ていて非なる施設でして、その福祉の理念、ベーシックな考え方もけっこう異なっています。

障害者のグループホームは、障害者総合支援法という介護保険法によく似た建付けのサービスで、利用者とサービス提供者とは契約関係で結ばれています。

自立援助ホームは、未成年者を対象としていて児童福祉法に則っております。未成年ですから契約関係は結べません。「児童が入所したいと申し込む」という擬似的な契約であり、入所については児童相談所所長による措置決定になります。行政による措置なのです。昔から福祉業界にいらした人には昨今の契約社会は何か窮屈だと感じる方もいて、そんな人には昔ながらの措置のしくみによる福祉サービスのほうがしっくり来る人もいます。

数年前に自立援助ホームでこんなことがありました。

その時、開設して2年目のホームには子どもは1名しか入所していませんでした。スタート時は2名いたのですが1名はほどなく退所になりました。5人定員のホームで17歳の彼が一人。冬が訪れて、寒くなりクリスマスが近づいて来た頃にある世話人さん(女性)と考えたことがありました。「クリスマスに子ども一人きりでは可哀想だから、小さな鍋パーティーでもしようか。私も泊まるから、焼酎でも飲みながら語ろうではないか」

その世話人さんと私は疑似的な両親みたいな役割となり、ちょっぴりいつもと違った演出をしてみました。年末年始くらいこんな日があってもいいかと思い、子どもも楽しんでいました。もちろん子どもはジュースですよ。

年を越して、新たな子どもたちが入所しました。3人、4人と利用者が増えてようやく共同生活の体をなしてきました。子どもの中には喫煙や飲酒をする者も現れて、生活のルールを守らせていくことに苦慮するようになってきました。クリスマスに鍋を囲んだ彼も、喫煙や飲酒といったルール違反をしだしたのです。

ある時、子どもの飲酒や喫煙を世話人さんが見ぬふりで、あらぬことか子どものためにおつまみまで作ってしまう世話人さんも現れました。私はそれを注意したのですが思わぬ反撃に遭いました。「荻野さんだって、ホームでお酒を飲んでいたことを知っています。子供の前でいけないことではないですか!」

例の彼は、クリスマスの出来事を他の子どもや世話人さんに吹聴していたのです。「僕は荻野さんに信頼されているんだよ」とちょっぴり鼻高々に。

世話人さんの糾弾を受けながら、私は「違うんだって!」といってみましたが、何が違うのか?

障害者総合支援法の世界と、児童福祉法で第二種の福祉では約束事、ルールの許容範囲とか違ってくるよ。と私が言ったところで理解できない世話人さんには理解できない。

一つ言えることとして私はこのようなことを障害者グループホームですることはないのです。

そして現在、自立援助ホームの指導員として活躍してくれているスタッフにこのエピソードを話すと、彼女には(ハートウォーミングないい話)にしか聞こえないようで何がいけないのか逆にわからないのです。このリアクションも興味深いものでした。職員も酒を飲み、子どもと距離を近づける、って子どもに対してよく向き合ったよい逸話。自立援助ホーム協議会の世界ではそうなります。

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